《記憶が罪に問われるとき》 全記録 ── 東京 2026年5月27日–6月7日


会期2026年5月27日(水)–6月7日(日)(12日間)
会場早稲田奉仕園 スコットホールギャラリー(東京都新宿区西早稲田2-3-1)
主催天安門事件追悼実行委員会
構成団体Lady Liberty Hong Kong/アムネスティ・インターナショナル日本/アジアと中国の民主化フォーラム/民主中国陣線/中国民主団結連盟/対話中国日本支部
主要日2026年6月3日(水) ── 記念講演会・追悼キャンドルナイト
来場者写真展会期通算550名/6月3日記念講演会・キャンドルナイト 250名超
報道掲載確認済み22媒体(朝日新聞紙面、NHK、TBS、テレビ朝日、日本テレビ、テレビ東京、日本経済新聞、共同通信、読売新聞、毎日新聞ほか)
入場料無料

1. 展示《記憶が罪に問われるとき》

企画の背景

1989年6月4日、北京の天安門広場で起きた事件から37年。中国国内では公の場での追悼はおろか、事件そのものを語ることすら許されていません。香港においても、2020年の国家安全維持法、そして2024年の国家安全条例(基本法23条立法)を経て、毎年13万人以上を集めていたビクトリア公園のキャンドルナイトはもはや開かれず、香港市民支援愛国民主運動連合会(支聯會)の元幹部3名 ── 李卓人さん、何俊仁さん、鄒幸彤さん ── は「国家政権転覆扇動罪」で起訴され、3年以上にわたり拘留が続いています。

本展は、香港の市民社会が30年余にわたって築いてきた「記憶」の仕事を、その公開が困難になった今、東京という場所で問い直す試みとして企画されました。

軸となるテーマは、「権力による記憶の抹消への抵抗」です。

展示構成

展示は4つの章で構成され、記憶と言葉が辿る4つの段階 ── 「名づけ」 → 「公共実践」 → 「法廷での再解釈」 → 「来場者自身の現在」 ── を辿ります。

第1章|1989年 ── 事件と命名

1989年の運動と、それをどう名づけるかをめぐる争い。「動乱」「反革命暴乱」「愛国民主運動」「天安門事件」「六四」 ── 誰が、何を、どう名づけたかによって、その後の37年間の語りが規定されてきました。記憶の問題は、まず「名づけ」の問題です。

第2章|香港 ── 最後の公共空間

[画像: CH2 主要パネル一枚]

1990年から2019年まで、香港のビクトリア公園で毎年6月4日に開かれていた追悼キャンドルナイト。最大18万人が集ったこの集会は、世界で唯一、中国の主権下で公然と行われていた六四追悼でした。30年にわたって記憶を公の場で語り継いできた公共実践を、写真と年表で辿ります。

第3章|法廷に立たされる言葉

[画像: CH3 主要パネル一枚]

2020年の国家安全維持法、そして2024年の国家安全条例(基本法23条立法)以降、香港の公判で起きていること ── 「平反」「絶食」「悼念」「燭光」といった長年用いられてきた語彙が、法廷で「扇動」の証拠として再解釈される転換。支聯會案(李卓人・何俊仁・鄒幸彤)の最終弁論および鄒幸彤さんの陳述を中心に追います。

第4章|誰の記憶か

[画像: 記憶の壁 close-up]

来場者自身が、自らの現在の位置から ── 香港人として、中国人として、日本人として、あるいは別の場所から ── 記憶とどう関わっているかを見つめ直す参加型の空間。「記憶の壁」に書き残されたメモが、新たな記憶の層を生んでいきます。香港から、中国本土から、日本から、東南アジアから、ヨーロッパから ── 12日間で140枚のメモが残されました。


2. 6月3日|記念講演会・追悼キャンドルナイト

6月3日(水)、台風ジャンミーが東京を直撃するなか、250名を超える方々が早稲田奉仕園 スコットホールにお越しくださり、本展の関連プログラムとして記念講演会と追悼キャンドルナイトを開催しました。1階客席のみならず2階回廊まで埋まり、立ち見の方々も多数いらっしゃいました。雨が屋根を打つ音とともに、追悼の時間が始まりました。

▼ 当夜の臨場感ある記録はこちら

登壇者(敬称略・登壇順)

井出慶太郎(アムネスティ・インターナショナル日本/司会)、王進忠(実行委員)、牧野聖修(元衆議院議員)、阿古智子(東京大学大学院教授)、李伊東(Lady Liberty Hong Kong 代表理事)、アリヤ・ツェワン・ギャルポ(ダライ・ラマ法王日本代表事務所代表)、田中サウト(日本ウイグル協会 副会長)、笠井哲平(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)、北井大輔(アムネスティ・インターナショナル日本 副理事長)、潘嘉偉(Patrick Poon/Asian Lawyers Network 理事・HRMI East Asia Engagement Lead)、曾我篤(カリグラフィー作家)、伍雷(元中国人権派弁護士)、吾爾開希(八九民運学生指導者)、董鵬(共同声明朗読)、王進忠(閉会の挨拶)

▼ 全15登壇者のスピーチ全文は講演録ページで公開しています。


3. 獄中からの声 ── 鄒幸彤さんの6月4日声明

[画像: Chow’s statement printed copy / または rally で読み上げの瞬間]

当夜、いま香港・大欖(タイラム)女子監獄の独房に収監中の鄒幸彤さんから、本展に寄せた声明文が会場にて配布・読み上げられました。鄒さんは6月3日夜、37周年に合わせ獄中で37時間の絶食を開始されました。「沈黙することを拒む」ためであると、書面に明記されています。

「中国政府がもっとも恐れているのは、人々が忘れることを拒むこと。そして、その恐れにいまや加わったのは、私たち民衆が沈黙することを拒んでいることである。」

「あれは、支聯會と被告に対する裁判ではない。あれは、本質において、何百万もの香港人の良心に対する裁判であり、香港の司法そのものに対する裁判である ── 国家安全諸法のもとに置かれたこの新しい時代に、香港の法治にどれだけの命が残っているかを試す試金石である。」

「権力と独裁の輝きの裏には、ふつうの人々の血と、砕かれた夢があることを、どうか忘れないでください。健忘のなかにこそ、民主主義の終焉があります。彼らは私たちを牢に閉じ込めることはできても、私たちの魂までは支配できません。」

── 鄒幸彤、2026年6月4日

声明全文(英文原文・日本語訳):/policybrief/chow-hang-tung-statement-37


4. メディアの取材

本展および6月3日の集会には、12日間を通じて22媒体から取材・掲載をいただきました。「香港が30年余にわたって守ってきた記憶を、日本の場で抱える」── 本展の試みは、当夜の会場を超えて、日本の主要メディアを通じて広い読者・視聴者層へと運ばれていきました。記憶の伝達は、会場の壁の外でも、確かに続いていました。

日本の主要全国紙5紙すべて(朝日・読売・毎日・日経・産経)、NHK、民放4キー局すべての系列ニュース(日テレ/TBS/テレビ朝日/フジ/テレビ東京)、共同通信、ならびに国際英語メディアで報道されました。

主要な報道(一部)

朝日新聞|紙面(2026年6月4日朝刊・国際面 9面 13版S) 「天安門 禁じられた墓参り」「事件から37年 風化強いる当局」 / サイドバー「都内で追悼」(本展集会に約200人と紹介・キャンドルナイト写真掲載── 本展に直接言及した、最も詳細な国内紙報道。

NHK NEWS WEB「中国 天安門事件からきょうで37年 事件知らない若い世代も」「中国 天安門事件から37年 北京では追悼の動きなど警戒」

TBS NEWS DIG|当日取材・番組内放送あり(オンライン記事URL要追跡)

テレビ朝日(ANN)|当日取材・番組内放送あり(オンライン記事URL要追跡)

日本テレビ NEWS NNN「天安門事件からきょうで37年 当時の学生リーダーが会見『日本も中国の脅威に対する最前線に立つべき』」

テレビ東京 WBS(ワールドビジネスサテライト)当日特集

FNNプライムオンライン(フジテレビ系)「『天安門事件』から37年 民主化運動の学生らを軍が武力鎮圧…」

日本経済新聞「香港『一国二制度』どうなった? 崩れた国際的な約束事」

産経新聞「天安門事件6月4日で37年、元学生指導者が会見『日本も中国の脅威の最前線に立つとき』」

読売新聞6月4日付・国内(national)面記事

毎日新聞「中国当局、天安門事件遺族の墓参りを初禁止か 追悼文読み上げも」

共同通信「天安門事件の墓参り禁止 中国当局、遺族抗議」「天安門事件37年、追悼抑圧 中国、『負の記憶』消去」

国際・英語メディア

Nikkei AsiaActivists struggle to keep spotlight on Tiananmen in world beset by crises

The Epoch TimesTiananmen Massacre Memorials Span Globe as Remembrance Is Suppressed in China, Hong Kong(早稲田の集会に直接言及)

UPIWu'er Kaixi warns South Koreans on North Korea

AP通信ワイヤー(The Hill 等配信)|A Hong Kong artist tries to mark the Tiananmen crackdown. Police quickly stopped him

Reporters Without Borders (RSF)On the Tiananmen massacre anniversary, student movement leader Wu'er Kaixi speaks up for journalists

Central Tibetan AdministrationRepresentative Dr. Tsewang Gyalpo Arya Attends 37th Anniversary of the Tiananmen Square Massacre in Tokyo


5. 来場者の声

会期12日間にわたって、来場者の方々が「記憶の壁」に残してくださったメモは 128通、使用された言語は 8言語(繁体中文・簡体中文・中国語(書体特定なし)・日本語・英語・韓国語・ロシア語・モンゴル語)に及びました。香港の繁体字と中国本土の簡体字が並び、そのあいだに日本語・韓国語・ロシア語・モンゴル文字が書き加えられた、現在の世界で他では実現していない多言語の現場 ── それが12日間、東京で確かに存在しました。

互いに緊張関係にある政治的立場 ── 香港localist、汎中華民主派、台湾的民主、人道的、批評的 ── が、同じ壁の上で共在しています。当方の意図せずして、本展のキュレーション論題そのものに正確に応答した3通の留言も、壁の上に残されていました(クンデラの一文、劉暁波の引用、紫陽花=趙紫陽の暗号)。

代表的な留言から:

記憶は武器。」 ── 日本語、#082

「我願榮光歸香港。」(願わくは栄光を香港に。) ── 繁体中文、#125 ── 2019年香港の抗議運動で歌われた「願榮光歸香港」のタイトルを書き残したもの

「晚清專制時期,感謝日本接納了中國異見分子的流亡,現在的日本還有那個胸懷嗎?」 (清朝末期の専制の時代、日本は中国の反体制派の亡命を受け入れてくれた。今の日本に、まだあの度量はあるだろうか?) ── 簡体中文、ある河南人より、2026.6.7、#094

全128通の書き起こし・テーマ別キュレーション・「3つの偶然の照応」、そしてCSVカタログ:「記憶の壁」── 12日間・8言語・128通が語ったこと

来場者からの記事

集会にご来場くださった在日華人ライターの孔徳裕(Tokuyu Ko)氏は、約2,000字にわたる批評記事を執筆されました。本展で重視した「権力による記憶の抹消への抵抗」というテーマを、ご自身の二言語的・二文化的な視点から論じてくださっています。記憶の継承が、世代を超え、国境を越え、媒体を超えて、読み手の側で続いていることの確かな証左です。

記事全文:Tokuyu's Substack「六四事件37周年、在东京」


6. これから ── 判決の夏へ、そしてその先も

雨と風のなか、私たちと共に過ごしてくださったすべての方々、12日間にわたって会場に足を運んでくださった皆様、そして香港の人々が30年以上にわたって守り続けてきた記憶を日本の視聴者・読者へとつないでくださった報道関係者の皆様、共に主催にご参加くださった各団体、そして当夜ご登壇くださった国内外15名のスピーカーの方々に、心より感謝申し上げます。

支聯會元正副主席である李卓人何俊仁鄒幸彤の3氏への判決は、2026年5月19日に最終陳詞が結審し、今夏(7月もしくは8月)に下される見込みです。罪状は「国家政権転覆扇動罪」。3氏の拘留はすでに1,700日を超えました。

本展は、その判決の前に、香港の市民社会が30年余にわたって積み重ねてきた記憶の仕事と、現在進行中の力学を、東京という場所で問い直す試みでした。判決の日まで、そしてその先も、Lady Liberty Hong Kong は支聯會案および香港・中国の人権状況をめぐる最新の情報、調査・分析、関係者の声明等を、当ウェブサイトおよびニュースレターを通じて継続的にお届けしてまいります。

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